令和8年度【西宮商工会議所】事業所向けアンケート調査結果
2026.08.04会員事業所の皆様へ
平素は西宮商工会議所の事業活動に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。先般実施いたしました「令和8年度 事業所向けアンケート調査(~兵庫県・西宮市への要望等~)」につきましては、ご多忙中にもかかわらず、多くの会員事業所の皆様から貴重なご回答をお寄せいただき、誠にありがとうございました。
実施期間 令和8年4月27日(月)~5月29日(金)
回答件数 438件
今回の調査では、人手不足やエネルギー・原材料価格の高騰、設備投資の動向など、皆様が直面されている喫緊の経営課題やまちづくり全般に関する生の声、そして行政に対する切実なご要望を多数頂戴いたしました。
特に、「中東情勢を巡る影響について」は会員事業所に与える影響が大きいことから、緊急要望として3つの要望項目(「国への強力な働きかけ(現場の実態調査と流通目詰まりの解消に向けて)」「資金繰り支援の迅速な拡充(信用保証料負担制度の拡充)」「直接的なコスト負担軽減策(インフラ・エネルギー補助)」)にとりまとめ、6月23日(火)に西宮市長宛に提出しました。
このほか、全てのお寄せいただいた貴重なご意見・ご要望は、当会議所がとりまとめ、兵庫県および西宮市へ提出し、早期実現に向けて強力に働きかけてまいります。ぜひご一読いただき、地域の現状や課題の共有にお役立ていただけますと幸いです。
令和8年度【西宮商工会議所】事業所向けアンケート調査結果報告書
1. 貴社の景況感について

【回答の傾向と主なご意見】
「変化はない」「悪くなっている」と回答する事業所が多い一方で、「良くなっている」との声も見られました。 「悪くなっている」理由としては、物価高騰、原材料や資材の価格上昇、深刻な人手不足などが利益を圧迫しているという声が多数寄せられました。一方で「良くなっている」と回答した事業所では、新規開拓の成功や、価格改定(単価アップ)の実施、DX(デジタルトランスフォーメーション)化による生産性向上が実を結んでいる傾向が見られます。
2.来季の見通しについて

【回答の傾向と主なご意見】
来季についても先行き不透明感が強く、「悪くなる見通し」「変化はない」との慎重な見方が目立ちました。 中東情勢の長期化や、さらなる物価・人件費の高騰を懸念する声が多く挙がっています。しかしながら、新規事業の展開やAI・DXの導入効果を見込み、「良くなる見通し」と前向きな見解を示す事業所も一定数存在しています。
3. 中東情勢を巡る影響について

【回答の傾向と主なご意見】
「すでに影響が生じている」「影響が生じる可能性がある」と、多くの事業所が強い警戒感を示しています。 具体的な影響として、ナフサなど石油由来の資材(プラスチック製品、包装材、塩ビ管など)の価格高騰、供給停止、納期遅延が深刻な課題となっています。また、ガソリンや軽油など燃料費の高騰による物流・移動コストの増加も経営を大きく圧迫している実態が浮き彫りになりました。
4. 物価高騰による影響について

【回答の傾向と主なご意見】
原材料費やエネルギー価格の高騰に対し、大半の事業所が「ある程度影響を受けている」または「非常に大きな影響を受けている」と回答しています。最も影響の大きいコスト項目としては、「原材料費」と「人件費」、次いで「物流費・燃料費」が挙げられています。
5. 物価高に伴う価格転嫁の現状について

【回答の傾向と主なご意見】
「ある程度価格転嫁できているが、一部は自社で吸収している」「ほとんど価格転嫁できていない」という回答が多くを占め、コスト上昇分を十分に転嫁できていない実態が明らかになりました。 競合他社との関係や、顧客の買い控え(客離れ)への懸念から、値上げに踏み切れないという声が多数あります。また、医療・介護・福祉など公定価格で事業を行う業種や、下請け構造にある業種からは「価格転嫁が制度的・構造的に困難である」との悲痛な声も寄せられました。
6. 賃上げの実施状況について


【回答の傾向と主なご意見】
「実施した(5%未満の上昇幅が最多)」事業所と、「実施していない(またはできない)」事業所が混在しています。 実施した事業所の原資は「内部努力(利益を削るなど)」が圧倒的に多く、「価格転嫁」で賄えているケースはごく少数でした。最低賃金引き上げへの対応や、深刻な人手不足の中で「人材を確保し、定着させるため」に、身を削ってでも賃上げを実施せざるを得ない苦しい状況が窺えます。
7. 人手不足等、人にまつわる課題について


【回答の傾向と主なご意見】
多くの事業所が「採用が難しい」「定着しない」「人材育成が追いつかない」といった深刻な課題を抱えています。 働き方改革(労働時間の上限規制など)に関して、「働きたい人が働けない(収入が減る)」「現場の柔軟な対応を難しくしている」「新人指導の時間が十分に取れない」といった、制度と現場の実態とのズレを指摘する声も寄せられました。
8. 企業立地、設備投資について

【回答の傾向と主なご意見】
「計画はない」とする事業所が多いものの、投資を行う事業所は「省力化・人手不足対応」や「生産能力増強」を主な目的としています。投資への意欲はある一方で、「導入コストが高い」「建築資材や設備費の高騰」が大きなハードルとなっているというご意見が多く見られました。
9. AI・DXについて

【回答の傾向と主なご意見】
「一部取り組めている」「取り組みたいが進められていない」という回答が多くを占めました。 課題としては「導入コストが高い」「社内にノウハウがない」「日々の業務が忙しく取り組む余裕がない」が多く挙げられています。今後の関心分野としては、AI(ChatGPT等)を活用した文書作成やSNS発信、日常業務の効率化、データ活用に期待が寄せられています。
10. インフラに関する県・市への要望について
【主なご意見】
交通網の整備: 市内南北を繋ぐ道路の慢性的な渋滞緩和、自転車専用レーンの整備、公共交通機関の利便性向上を求める声が多く寄せられました。 生活・防災インフラ: 老朽化した下水・水道管の整備、災害時の高潮・津波・地震対策の強化、夜間の街灯増設による防犯強化などの要望がありました。
11. まちづくり、再開発、集客に関するご意見、ご要望
【主なご意見】
甲子園口や西宮北口周辺、駅前エリアの再開発、および南北の地域格差の解消(北部エリアへの支援・交通網拡充など)を望む声がありました。 市内公園や空き店舗、商店街を活用した集客イベント、ワークショップ等の開催による賑わい創出と、そのための各種申請手続きの簡素化・規制緩和を望む意見もありました。
12. 活用を予定している補助金・施策等について

【主なご意見】
「小規模事業者持続化補助金」「(新)西宮市省力化・生産性向上設備導入支援補助金」「(新)西宮市AI導入支援事業補助金」「西宮商工会議所ホームページ制作補助金」などの活用を検討している事業所が多く見られました。
13. 産業政策への意見、ご要望(県・市、商工会議所に対して)
【主なご意見】
補助金制度の改善: 申請手続きの簡素化や、補助金情報の分かりやすい周知、小規模事業者でも実情に合わせて使いやすい制度設計が求められています。
伴走型支援と交流の場: 単なる資金援助だけでなく、AI導入や人材確保に関する専門家の「伴走型支援」や、事業者同士の情報交換・マッチング機会の提供が強く求められています。 公定価格(医療・福祉など)で苦しむ事業者への特別な救済策や、本当に頑張っている企業を伸ばすための実態に即した支援を求める切実な声も多数寄せられました。
14.業種・従業員数について



【従業員規模別】の主な傾向
■ 0~5人(小規模・個人事業主)
価格転嫁の難しさ: 物価高や経費増の影響を強く受けているものの、「顧客離れが怖い」「競合他社が上げていない」といった理由から、「価格転嫁は困難」「ほとんどできていない」と回答する事業所が圧倒的に多くなっています。
賃上げと人手不足: 賃上げは「実施していない」か、しても「5%未満」が主流です。原資は身を削る「内部努力」。人手不足については「人を雇う余裕がない」「社長一人のため関係ない」という回答も目立ちます。
投資計画とAI・DX: 日々の業務と資金繰りに追われており、設備投資は「計画はない」が多数。AI・DXについても「ノウハウがない」「導入コストが高い」「日々の業務が忙しく取り組む余裕がない」ため、着手できていない事業所が多くを占めています。
■ 11人以上(11~50人、51~300人の中規模)
価格転嫁と賃上げ: コスト増に対して「ある程度価格転嫁できている」割合が増加します。また、最低賃金の上昇だけでなく、「人材の流出防止」や「採用競争力の維持」を目的として、「5%~10%以上の賃上げを実施した」という積極的な事業所が多く見られます。
深刻な人材不足と投資意欲: 採用難や若手の定着率の低さが事業拡大のボトルネックとなっており、それを補うための「省力化・人手不足対応」「生産能力増強」を目的とした設備投資に非常に前向きです。
AI・DXの推進: 「一部取り組めている」割合が高く、業務効率化やデータ活用に向けて、補助金を活用しながらITツールやAIの導入を進めようとする姿勢が顕著です。
【業種別】の主な傾向
■ 製造業・建設業
中東情勢・物価高の影響: ナフサなどの石油由来資材(プラスチック、塩ビ管、塗料、包装材など)の高騰と納期遅延・出荷停止が事業の根幹を直撃しており、「非常に大きな影響を受けている」との声が突出しています。
価格転嫁: 製造業は「ある程度転嫁できているがタイムラグがある」という声がある一方、建設業は「民間工事や下請け構造のため価格転嫁が困難」「受注後の資材高騰を被らざるを得ない」と苦しい実態が浮き彫りになっています。
AI・DX: 現場の職人不足を補うため、機械化やDXに関心はあるものの、「製造現場でのDX化は難しい」「導入コストが高すぎる」ことが課題となっています。
■ 小売業・飲食業
物価高と価格転嫁: 食材費、包装資材、光熱費の高騰が直撃しています。一方で「価格転嫁(値上げ)をするとスーパーや大手チェーンに客を奪われる」「買い控えが起きる」との懸念から値上げに踏み切れず、利益を削って耐えている店舗が多数です。
人手不足・投資: 賃上げの余力がないため、良い人材が集まらない・定着しないという悪循環に陥っています。設備投資の余力も乏しく、「計画なし」や「規模縮小」を検討する声も見受けられます。
■ サービス業(IT、不動産、コンサル、士業など)
物価高の影響: 原材料費の高騰というよりは、人件費、通信費・システム利用料、移動のガソリン代などの上昇が利益を圧迫しています。
AI・DX: 他業種と比較してAI・DXへの関心が最も高く、「ChatGPTを活用した文書作成」や「業務自動化」などにすでに取り組んでいる、あるいは積極的に進めたいという声が多く寄せられています。
■ 医療・介護・福祉
特有の構造的課題: 衛生用品(手袋など)や送迎用ガソリン代の高騰によるダメージを受けていますが、最大の問題は「保険制度(公定価格)のため、価格転嫁が制度上一切できない」点にあります。物価高騰分は全額自社で吸収せざるを得ず、処遇改善加算などの補助金がなければ賃上げも困難という、極めて厳しい実態が報告されています。
【まとめ】
分析の傾向として、従業員規模が大きくなるほど「価格転嫁」や「賃上げ」「DX投資」へ対応する体力が垣間見えますが、小規模事業者(特に飲食・小売・下請け建設業)は、物価高の波をもろに受けながらも価格転嫁できず、賃上げや投資に踏み出せない厳しい状況にあります。また、業種ごとの課題(製造・建設の資材不足、医療福祉の価格転嫁不可など)も非常に明確に分かれていることがわかります。
【最後に】 西宮商工会議所の役割
本調査で寄せられた「生の声」は、単なるデータの集積ではなく、地域経済の持続的な発展を願う経営者の皆様の覚悟と、西宮の未来への提言です。ご協力いただいた会員企業の皆様に心より感謝申し上げます。西宮商工会議所は、今回浮き彫りになった「年収の壁」の是正や「ナフサ不足」への対策、インフラ整備の早期完了、さらには使い勝手の良い補助金制度の実現に向け、本結果を兵庫県、西宮市、および国へ強力に届け、政策提言を進めます。 地域経済の活性化と、会員企業の皆様の持続可能な経営を支えるため、当所は一丸となって取り組んでまいります。